つい先日までの賑わいが嘘のように、夕暮れ時のビーチは、人もまばらだった。
エミコの頬を伝う涙も波風も、夏の終わりを告げていた。
エミコは、独りずっとずっと遠くをただぼんやり眺めていた。
伊勢湾に浮かぶ貨物船が見える。あの船は、いったいどこに向かうんだろう。
津山さんはどこに行ってしまったんだろう。
東海国際空港、セントアースから飛び立った飛行機に乗れば、津山さんに会えるんだろうか。
エミコの頬を堰を切ったように、涙がこぼれ落ちる。
ポロポロこぼれ落ちる。
「エミコさんですよね?」エミコは我に返って振り向いて、その男の顔を覗き込んだ。
「あ、えー畑と申します。津山さんと一緒に・・・」。
エミコは、すぐに思い当たると、腰を上げ、ぺこりとお辞儀をした。
「なんか、すいません・・・ずっと見てたわけじゃないんですけど・・」畑は突然声をかけたことを詫びた。
「いえいえいいんです。・・わたし・・わたしこそ・・なんか、恥ずかしいとこ見られちゃって。・・あの畑クンの事は以前からカズヤから聞いてます・・。」エミコは、既に礼節をわきまえた女性を取り戻していた。
二人は他愛もない話をした。
学生時代のカズヤの話。
カラオケではしゃぎ過ぎて出入り禁止になった話。
猛アタックを受けて付き合った彼女をようやく好きになった頃、一方的にふられてしまった話。
エミコは、久しぶりに笑った。
「そろそろ僕帰らなくちゃ・・」畑は腕時計を見ながら言った。
「あっそうね。私も・・」。
少し肌寒くなっていた。
「でも、津山さん、まじギャグですよね。ほんま、あほちゃうかって感じです。」
畑は突然、津山のことを話し出した。
「なんでやねん。ほんま、なんでやねん!」
畑の目に涙が浮かんでいた。
愛知県警捜査一課の吉田は、一つずつ、点と点を線で結んでいた。
単なる物盗りの犯行ではないことは分かっていた。
では、何故、あの部屋に犯人は忍び込んだのか。
盛山一族のお嬢様が、居たことが関係あるのだろうか。
いや、それはたまたまだろう。
・・・しかし、どうも、このところ、知多半島界隈が騒がしい。
セントアース建設決定前の騒々しさは、開港と同時に収まった。
しかしここに来て、また、その時の雰囲気がぶり返したようだ。
吉田は、アシスタントの小杉に知多半島全域の暴力団から目を離すなと指示をだした。
吉田は自らの胸騒ぎのワケを知りたかった。
1 件のコメント:
正統派だわ。
あのヒョンビンもどきを演じた
お笑い満載のダンピョン執筆とはどうしても思いにくい (+o+) シンクロしない
けれど人物名にはお笑いのにおいが…(^^)
松本・内村・吉田・小杉… うふふ
次は誰を?
島田・有田・徳井・春日…etc?
ジャニーズも使って~!
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